異変は夢から始まった

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眠りたくないと言う気持ちと忘れたいと言う気持ちの両方が働いていた彼にも睡魔が訪れた 夢の中で彼は普通の日常だった 東京の大山のマンションで起きた彼はパジャマのまま夫婦の寝室を出た テーブルでは妻と娘が朝食を食べていた 彼は挨拶した 「おはよう」 二人は返事をしなかった 彼は鼻白んだが我慢して聞いた 「俺の分は?」 妻は言った 「冷蔵庫にあるでしょう」 彼は冷蔵庫を開けた 中にはお盆の上にスープ皿とスプーンが置いてあった。 彼は冷蔵庫から皿とスプーンを出すとスプーンで皿を叩いた 「おい中身は?」 「鍋にあるでしょう」 彼はガスレンジの上でグツグツ煮立っている寸胴に向かった 寸胴の中で何かが煮立っていた。 「フォンドボーかな」 彼はおたまで中身をすくい上げた その途端後ずさりした 煮立ってのはケータイだった 彼は怒鳴った 「なんでケータイなんて煮るんだ 俺は浮気なんてしてないぞ」 妻は笑って言った 「何興奮してんのよ ケータイ、ビール缶美味しいじゃない」 彼は叫んだ 「お前こそ何言ってるんだ それにこのケータイ」
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