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彼は部屋の中を見渡した
「もうすぐ、ここともお別れだ」
彼は現在会社から一キロ離れた粗末な軽鉄筋のアパートに住んでいる
部屋の間取りは2LDKだが、彼の社会的地位から見れば貧相な住まいだ
築は二十年は立ってるだろう
しかし二年間の赴任先の住まいとしては、こんなもんだろうと思っている
結局四年住んでしまったが、特に不便はなかった
住めば都と言うが、しばらくして出るとなると名残惜しい
そう言えば栄転で月給も大幅アップだから八年ものの車も替えなきゃならない
八年前は娘が幼かったのでファミリータイプのワゴン車だが今度は高級感のある乗用車にしようと彼は思った
女は年齢を重ねるごとに高級志向になって来るらしいと何かの雑誌に書いてあったのを彼は見ていた。
彼は部屋を出るとまっすぐな階段を下りて未舗装の砂利敷の駐車場に出てその一角を見た
車を替えるにしても車検の残りとか調べて、なるべく経済的にやりたかったからだ。
彼がマイカーの方を見るとルーフに何か乗ってるのに気がついた
彼はあまり考えずに車に近づいた。
近づくとそれは水筒だった
そしてその水筒は見覚えのある
彼は思わず後ずさりした。
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