異変は夢から始まった

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しかし改めてみると水筒は消えていた 彼は言った 「疲れているんだ それが幻影を見せるんだ」 彼はタバコを吸おうと昨日から着たままのスーツのポケットを探った 何か手にべっとりついた物があった どうみても血だった 彼は愕然となった 血はポケットから広がっていた 彼は思わずポケットに手を突っ込んだ 中から出て来たのは、男にゆすいでもらったハンカチだった ハンカチは血だらけだった 彼は思わずハンカチを捨てた ハンカチは普通のハンカチに戻っていた ポケットの血も手の血も消えていた。 彼はまた譫言のように言った 「疲れてるんだ、これは幻想だ」 しかし身体から力が抜け膝をついた その時ケータイの着信音がなった 電話の相手は商店街の会長だった 彼は形式通り挨拶した 「お世話になります会長」 「副センター長、水くさいじゃないか 本社に戻るんだってな 栄転で」 「栄転なんて、とんでもございません ただの移動です いずれにしてもご挨拶は後でうかがうつもりでした」 「謙遜するなよ、本社の花形部門に行くって言うじゃないか それで、その祝いをしたいんで
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