異変は夢から始まった

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と言うじゃないか 東証一部上場の重役だぞ、平取だってたいしたもんだ」 「会長だって市長へ出馬要請が頻繁だって聞きますよ」 「それは慌て者の選挙ブローカーの寝言だ、俺は先祖代々の家屋敷と店を守るので精一杯の器だ」 そうは言うものの本音は、結構ちがう物 酒が進むに連れて会長の本音が表へ出てきた 「本当は俺は絵描きになりたかったわけよ で美大の受験に失敗して、それでもあきらめられなくて浅草のストリップ小屋で看板書いてたんだよ しかし実家の親父が死んで田舎に引き戻された 弟の面倒を見なきゃならないからな、その弟なんだけど、親父の晩年の過ちで生まれた奴なんだけど、こいつがガキの頃から神童とか言われて生意気な奴で、そいつが高三の時に大喧嘩、売り言葉買い言葉で家を出やがった すぐ戻って来ると思ったんだが、何しろ秀才だから周りがほっとかない 恩師の家に居候、学費を出して貰って東大に入学、恩師の娘と親公認で学生結婚、卒業後にキャリア官僚で警察庁に入庁、ちょっと出生に疵がある事以外はまさに順風満帆の人生だ まあ、うらやましい限りだが、こりゃどうしようもない」 彼は時計を見て呟いた 『本当に溜まってんだな
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