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「アキ……良かった……」
けんとは寝ている私を抱き締める。
気づけば私は、海に飛び込む前の場所に戻っていた。
「け……んと?」
全身がびしょ濡れではあるけれど、私は生きてるようだ。
虚ろな意識のまま、そういえばあの子は……と、目を動かす。
体力がなくて起き上がれず、その状態のまま少し辺りを見回してみる。
「大丈夫。お前が助けたあの子も無事だよ」
けんとが優しく目を合わせて私の心情を察してくれた。
けんとからそれを聞いて私は安心した。
「アキが目を覚ましてくれて本当に良かった……!」
けんとは少し泣きそうだ。
それを見ていると、心の底から安堵して私も泣けてくる。
「でも……どうなってるんだ?」
「え?」
「気づいたら、いたんだ」
「……いた?」
「海に沈んでいったはずのアキが気づいたら……隣にいた」
そう言われたとき、私は手のひらに何かを握っていることに気づいた。
ゆっくり開いてみると、そこにちいさな、鍵があった。そして一瞬流れた風で、砂のように消えていく。
私はその時に分かった。
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彼のもとに連れてってくれて、ありがとう。
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