夜の散歩と女の涙

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きらめくネオンとどこからか聞こえる車の音。 いつもガチャガチャと騒がしい金曜日の夜の街も、大通りから路地一つ入ってしまえば人気のない静さに包まれる。 もう4月も近い3月の夜は、生暖かい空気と夜露が混じり、なんとも独特な湿気を感じさせて、冬の名残で巻いていたマフラーは、今は完全に無用の長物と化していた。 背中にズシリと重たい熱源を背負って歩く俺は、うっすらと滲む汗が耳元から首筋にかけて流れるのを感じ、不快感に顔をしかめた。 「ごめんね…、獅子倉くん」 耳の後ろ辺りから聞こえる佐々木さんの声は小さくしょげ返っていて、いつもの勢いなど微塵も感じさせない。 「もう謝らなくていいよ。 てか、まだ痛むだろ?この膝」 「膝の痛みは大したことないの。今は足首のが痛い」 「…酒飲んだ後に、こんな細いヒールで勢い良く歩くからだよ」 「本当に、スイマセン…」 「ほら、公園着いたよ。ベンチに座って。足見せて。」 「うぅ~。本当に何から何まで申し訳ない」
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