1章-destroy-

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何も無かった。 何事も無かったんじゃない。 窓、壁、棚、ベッド、天井、部屋が無いのだ。 いや、部屋だけじゃない。病院が消えていた。 病院があっただろう跡の中心にその親子の姿だけあったのだ。 この事件は新聞の一面に掲載され、ニュースにもなった。 だがそれまで。これにも警察は介入したが、結局これが何だったのか分からずじまい。それも当然、証拠どころか全て消え去っているのだ。 次第にこの事件も薄まっていった。 親は俺を連れて逃げたが、明らかにおかしい赤ん坊が不気味になり、とある施設に預けられた。 この話はすべて親が施設の奴に話し、それを聞いたのだ。 だから親の顔は知らない。写真も無く、施設にいたころは外からの情報もまったく入らなかった。 それから施設で育ったのだが、地獄のような人生だった。物心ついたときから実験生活となっていた。 そこは特別保護施設と謳った、国の重要機密実験所だったのだ。
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