第一章 始まりの森

8/30
前へ
/844ページ
次へ
私はいつでも武器を出せるように準備はしつつ、より細かい周囲の状況把握に努めました 戦えそうなのは騎士のような二人と、杖を構えた魔術師のような人物だけと思いますが、此処が何処かお城の地下なら更に多くの騎士が待機している筈です 無理やり押し通る事も不可能ではないと思いますけど、此処から逃げて何処に向かうかという事になります イクスの居る方角は何となくで感じる事は出来るのですが、かなり遠くに居るみたいですね まずは情報を集めつつイクスと合流出来る道を探すべきでしょうか そこに王冠をかぶった初老の男性が一歩前に出てきたので私は警戒しながら相手の出方を待ちました 「ようこそ、キルカ国へ。我々は貴殿方を歓迎しますぞ、勇者殿」 「……勇者?」 「おお、これは失敬。儂はこの国の王、サイムス・キルカ。貴殿方は我々が行った勇者召喚によって招かれた勇者なのです」 勇者召喚、つまりはカミヤ君みたいな存在に私達がなったという事ですか? だとしても力の強さを鑑みるにイクスの方が勇者としての素質がありそうなものですけどね 「あの、勇者と言いますが、私達にそんな力はありません。それより、私達の他に二人居たんですけど、知りませんか?」 そこで口を開いたのは眼鏡の女の子ですけど、確かイクス達とは空で別れてから行方不明のままです それでも国の人なら何か知ってるかもと思って訊いたのだと思いますが、サイムス王は黙って首を横に振るだけでした 「その方々についても騎士団に捜索させましょう。容姿や服装についてお聞かせ願えますかな?」 サイムス王の申し出についてイクスの特徴を説明しましたが、やはり女に見える男という点が一番の特徴ですね 本人が聞けば怒ると思いますけど、それでもこれが分かりやすい特徴なので仕方ありません 眼帯の女の子は名前をユウキというそうですけど、そちらは見た目通り眼帯が一番の特徴のようです 「それと、勇者としての素質ですが、お二人に求めるのは何も力だけではありません。ドラゴンと共に生き、共に戦える事を求めているのです」 そう聞かされて呼び出された理由が少しだけ分かった気がします 私はイクスと共に生活して、眼鏡の女の子もイクスと共に戦ってきました つまり、そういった経験から選ばれたのだと理解します
/844ページ

最初のコメントを投稿しよう!

375人が本棚に入れています
本棚に追加