第一章 始まりの森

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ side・ユウキ 僕等は今、国境に向けて馬を走らせている最中だ あの後、可能な限り戦死した騎士団の人達を埋葬した後、まだ生きていた馬を捕まえて乗っている 僕も家の都合で流鏑馬とかやらされてたから馬の扱いには自信があるけど、やっぱり初めて乗る馬となると少し緊張する それでも上手く乗れているんだけど、もう自分の手足のように馬を操っている空と比べたら僕はまだまだだ 本当に何でも出来るよね、空って 「ねぇ、フィリア姫。次の国、サンサルシアって後どれくらいなの?」 「そうですね。森を抜けて街道もかなり進みましたから、後は大きな川を渡ればサンサルシアです」 「へぇ~、どんな国なんだろうなぁ、サンサルシア」 「……お前、本当に礼儀も何もないな」 僕もフィリア姫も同じ女の子なんだし、別に今は公式な場でもないから敬語とか礼儀とか必要ないと思うんだよね 普通の友達みたいに接した方が堅苦しくないし、何より楽しいよ 「イクス殿、姫様は同じ年頃の友人と接する機会が少なかったのですよ。ですのでユウキ殿の態度も我々はむしろ歓迎します」 「そうだよ、空。礼儀も大切だけど、やっぱり仲良く笑える方が大事だよ」 「……何か、最初に改まってた俺が馬鹿みたいだ」 空は頭を押さえてため息をついたけど、すぐに顔を上げて街道の方を見た 別に何も見えないけど、その丘の向こうには何かあるみたいだ 「少し身構えた方がいいな。身を潜めてはいるが、殺気が駄々漏れだ」 そう言うと馬の鞍に差していた長弓のアルテミスを構えた空は矢を一本だけつがえた 丘までは距離にして二百メートルってところだけど、長弓なら十分に届く距離だ そして狙いを定めた空は静止した馬の上から矢を放ったけど、それは丘の頂上付近にあった茂みに刺さる すると断末魔の悲鳴と共に一人の兵士が現れたけど、それはさっき森で襲ってきた奴等と同じ格好をしていた 待ち伏せてたって事は逃げ遅れた敵じゃない、それで周囲を警戒した騎士団は腰の剣と盾を構える 僕も先に出しておいたバハムートの太刀の鞘を左手に掴んで周囲を警戒した そして、空が二本目の矢をつがえた時、敵に動きが出る
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