第一章 始まりの森

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「グワァッ!」 最後尾を走っていた騎兵が叫び声を上げ落馬するが、それに続くかのように矢の雨が降ってくる 最初の一撃はまぐれ当たりだったのか、それ以外に落馬する者はいないが、それでも全体の士気を落とすには十分だった 「姫様、此処は我等が食い止めます!姫様はお一人でも最寄りのサンサルシアへ!」 「ですが、それでは貴方達が!?」 「御身の大切さをご理解下さい!必ずや国に戻り、この事を各国へ!」 「……分かりました。しかしギュネス、無理をする事はこの私(わたくし)が絶対に許しません!」 「………………ハッ、我が剣に誓って必ず!全騎反転!我等は此処で敵を迎え討つ!」 道幅の狭い森の中では馬で反転するには時間が掛かるが、騎兵達は最後尾から順に綺麗に反転してみせた 槍と盾を構え、矢の雨を防ぐ彼等を尻目に、単騎で国境を越える事を目指してフィリア姫は馬を駆る しかし、もう少しで森を抜けるという時になってフィリア姫の乗っていた馬が矢によって頭を射抜かれ絶命した 力を失った馬の背から投げ出されたフィリア姫は地面で背中を強打してしまう 幸いにして土が少し軟らかかった事と、最低限の受け身は取った事で背骨を折るなどの重症は避けられた それでもすぐに起き上がれるような痛みではなく、地面に踞るように倒れているフィリア姫に先程の矢を放った者達が姿を現す 全員が革鎧に短剣、弓と矢筒を持った軽装ながらも装備は統一されていて山賊などの類いではない 彼等はエドラ帝国の放った追手の内の百騎であり、軽装と馬を人数の倍用意する強行軍で森を迂回し先回りしていたのだ 「お姫様の逃走劇もこれで終わりだな。お前を捕らえたとなれば俺達には莫大な恩賞が与えられるんだ。悪く思うなよ」 兵を統率している百人隊長の男がフィリア姫に告げると姫を縛るように命じるが、フィリア姫は上半身だけを起こすと腰のレイピア抜く (せめて一人でも多くを道連れに……) だがそんな彼女の決意を踏みにじるようにレイピアを蹴り飛ばされる そして縄を用意した兵士が二人、他に武器を持っていないか警戒しながら縛り上げようとしたが、そこに頭上から声が掛けられた 「へぇ、この国だと大人数で女の子を追い掛け回す事が流行っているのか?」 そんな声と共に、フィリア姫に近付いていた兵士を蹴り飛ばしながら降りてきたのは向かっていたイクスだった
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