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「 私は、悠天寺吉右衛門と申す、
陰陽師でございます。
何かこの世に、未練など
ございましたか?
なにゆえ この様なところへ
宿っておいでなのですか? 」
「 私の名は 薫月(かおるづき)
故あってここに封印されているのです。
詳しい話をする前に、少し
封印をゆるめてはもらえまいか」
「 わかりました」
吉右衛門が、封印を緩めてあげると
薫月は燈籠の外へ出てきた。
雅やかな雰囲気を漂わせ
美しく、高貴であろうと思われる
霊体であった。
薫月は語りはじめた。
「 私はかつての恋人を探しているのです。
名を桜音(さくらね)と申します。
この波動の持ち主です」
そう言うと 薫月は
懐から半月の形をした櫛を出し
吉右衛門に渡した。
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