第2章 薫月(かおるづき)

3/5
前へ
/36ページ
次へ
「 私は、悠天寺吉右衛門と申す、 陰陽師でございます。 何かこの世に、未練など ございましたか? なにゆえ この様なところへ 宿っておいでなのですか? 」 「 私の名は 薫月(かおるづき) 故あってここに封印されているのです。 詳しい話をする前に、少し 封印をゆるめてはもらえまいか」 「 わかりました」 吉右衛門が、封印を緩めてあげると 薫月は燈籠の外へ出てきた。 雅やかな雰囲気を漂わせ 美しく、高貴であろうと思われる 霊体であった。 薫月は語りはじめた。 「 私はかつての恋人を探しているのです。 名を桜音(さくらね)と申します。 この波動の持ち主です」 そう言うと 薫月は 懐から半月の形をした櫛を出し 吉右衛門に渡した。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加