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『今度の土曜さ、一緒に遊園地行かない?』
片思いの先輩からの誘いに頷いて。
朝から、一生懸命オシャレした。
ちょうど入場チケット2枚貰ったんだ、先輩が言った。
待ち合わせの場所、10分前。
まだ早いのはわかってるんだけど、一応周りを見回して。
先輩が来ていない事にほっと息を吐いた。
……待たせるのは、嫌だもんね。
スマホを覗いても先輩からの連絡は何も来ていないから。
なんとなく落ち着かなくて、つま先を見下ろした。
それから何分たっただろうか。
不意に影が落ちて。
「おーまたせっ!」
目の前に立った人が腰を折って私を覗き込む。
ばっと顔を持ち上げれば、優しく笑った先輩で。
「せ……せんぱい、」
なんだかわからないけれど、目に膜が張った。
「んんー?……待たせたから、不安になっちゃった?」
ちらり時計を見れば、私が来てから3分経ったかどうかで。
不安……というよりは、コレはなんていうか、
「来てくれて嬉しくて」
ぼそり呟いた言葉に、先輩はからっと笑った。
「ははっ、待ち合わせしてるんだから、来るの当たり前でしょー?っつーか、待ち合わせしてなくても俺いっつも待ち伏せしてんじゃん?」
そうだった。
先輩はいつも私を待っててくれるんだ。
コクリ頷けば、にかっと笑って。
「うーっし、んじゃ早速しゅっぱーつ!」
2人、電車に乗り込んだ。
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