第1章

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沢山のアトラクションに乗って、騒いで。 とうとう目の前には、 「……おばけやしき、」 若干青ざめた私に先輩はにやりと笑った。 「なーに、もしかして苦手だった?」 あんまり悪戯な顔をするから。 「そ、そうでもないですよ」 私は強がって。 一歩、思い切って踏み出す。 おどろおどろしいメロディが頭上から降ってきて。 真っ暗な中、浮かび上がるお化けに、 「ひっ、」 息を吸った。 「くくくっ、大丈夫かー?」 楽しそうに覗き込む顔に頷いてみたけれど。 私の足取りはどんどん重く。 「せ、せせせせんぱいっ!ぜ、ぜ、絶対あそこから飛び出してきますよ!!」 「おー、望むところだ」 「えっ、やだやだ、」 「ほら、ばーっと走り抜ければ大丈夫だって」 パシリ、先輩は私の腕を掴んで早足で進む。 「ぎゃーっ!!」 案の定飛び出してきたお化けに叫び声を上げて。 とうとう私は先輩の腕にしがみついた。 「せ、せ、せんぱいっ、こわいよー」 「ははっ、後はもう出るだけだよ。っつーか、俺はお前が可愛すぎるけどね!」 ――ぽんぽん、 しがみついたのと反対側から伸びた手が頭に乗って。 覗き込むようにした先輩は、暗闇でもわかるくらい近く微笑んで、そして私の頭を撫でた。
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