第1章 ジンクホワイトの空

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なんか、よそ行きの言葉がでた。 「頑張ったんだし、価値あると思うよ。」 「ありがとな。」 笑顔。 でも、哀しそう。 海野君の笑顔は、時々哀しいくらい無邪気だ。 それでいて、100%の笑顔じゃないと私は思っていた。 それは、100%の笑顔を知っているからだ。 その笑顔を、向ける人を。 でも、その人は一年前のこんな桜が舞い散る中、転校してしまった。 別れの日。 無邪気にクラスメイトと話している二人が痛々しかった。 見送りの日にしては、盛り上がってしまっていた。 喧騒の中、二人の間で時が止まった。 見詰め合う二人。 二人から目を離せなかった私。 入り込めない二人の世界。 そんなものがあるような気がする。 時が動き始めた。 再びの喧騒。 別れのとき。 あの人は、何度も振り返った。 多分見えていたのは、海野君だけだったと思う。 海野君は、とても大切なものを失ったのだろう。 海野君は、それでも相変わらずだった。 いつも笑顔で、いつも走って。 そして、哀しいくらいにいつも全力だった。 「まあ、陸上はもういいかなって。」 「そう。」 海野君と花びらが戯れている。 なんだか、切なかった。 あの人なら、こんな時なんて言うのかな。 花びらが、はらはらと制服のブレザーに舞い降りる。 海野君の髪に桜の花びらが絡みつく。 「花びらが・・。」 私は、海野君の髪に、そうっと手を伸ばす。 私と海野君は、身長がそんなに変わらないから手が易々と届く。 「ああ・・。」 何の抵抗もなく・・。 私は、花びらを払う。 「市村も・・。髪が花びらで凄いことになっている。」 海野君はクスリと笑った。 「そう?」 「綺麗だな。このままがいいかも。」 「そんなこと言ってないで、掃ってよ。」 海野君の手が優しく動く。 「もう、伸ばさないの?」 私の髪は、耳が顔を出すくらい短く切っていた。 「伸ばさないよ。」 「ロングも悪くないよ。」 「誰かさんの、口車に乗ってショートしたらさ。楽さを覚えてしまったのさ。」 「まあ、ロングの方が、似合うけど。」 「ショートが似合うって言っていたじゃない。いう事が、すぐ変わるんだから。」
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