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ほとんどが無人駅で、運転手のみのワンマン電車だ。
バスみたいな感じ。
殆どの駅で出口は、運転席の隣のドアしか開かない。
運転手がキップの確認をするためだ。
海野君は、丁度中間くらいの中塩田駅で、私は終点の別所駅まで行く。
「俺、選択の授業で音楽か美術か迷ったんだけどさ。」
「どうしたの?」
「音楽にした。」
「私は、美術だけど。」
「市村は、そうだよな。で、絵も描いてみたいかもって少し思っている。」
「ふーん。」
「だから、部活でやろうかと。ちょっと、思ってさあ。」
「少しとか、ちょっととか、積極性がないよね。」
「まあ、迷っているんですよ。思春期だし。」
下之郷駅を過ぎた。
次は、中塩田駅だ。
「明日、待っているよ。」
「うん。じゃ、また明日。」
海野君は軽く手を振って降りていった。
私は、海野君を目で追う。
海野君は、ホームに残り電車をずっと見送っていた。
なんとなく目が合った気がした。
多分、海野君は私を、私は海野君を見ていた。
視線を逸らさず。
見えなくなるまで。
ずっと見ていた。
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