第1章

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ずっと気を揉ませているのもイヤだから、早く眠ってしまおうと、頭の中を真っ白にして、眠る事だけを考えた。 「………………」 だけど 午前中ダラダラ寝ていたのもあって ちっとも眠くなってこない。 何度も寝返りを打ちながら 眠る事だけに集中しようとしたけど 逆にどんどん冴えてくるばかりだ。 今何時だろう……。 それを確かめるのも躊躇う。 日付が変わってしまったのは確実だ。 連絡をくれないリューマ。 スマホの電池がないとか、そうゆう理由じゃない。 留守電に転送されるまでは、発信音が鳴ったんだから……。 ジクジク胸が痛み出して、 ジンワリとまた涙が滲んでくる。 眠ってしまいたい。 眠ってしまいたい。 眠くなれ、自分……! 「………………」 何時間、経過しただろう‥……。 気にするまいと思っていても、 リューマが帰って来る気配がなくて 不安が募っていくばかりだった。 スマホもメッセージもメールも着信の様子もない。 きっと急な仕事が入って、夜通し時間がかかってるんだろう。 ナオトさんの代わりで仕事が大変そうだったから‥……。 「………………」 脳も疲れ果て ウトウトとし始めた頃、 静まり返った空間で ガチャリと玄関のドアが開く音がした。 リューマが………… やっと帰ってきた‥……。 胸がドキドキしてくるのを感じながら 起きていた事がバレないように 寝たふりをしようと 心に決めた。 リューマも寝ている自分を気遣ってか 音を消すように 静かに寝室に入って来た。 「………………」 そしてクローゼットを開けて着替えている気配がする。 「………………」 リューマが静かにベッドに潜り込んで来て、 背中を向けている私を後から包み込んだ。 帰って来て、先に寝ている私をそうやって抱き締めてくれるのはいつもと変わらない………… けれど、 背中にリューマの体温を感じたと同時に フローラルの甘い香水の匂いが した。 こんな事は初めてだった。
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