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「ナオトから安易に1000万を借りてしまって……」
里奈はナオトからサポートを受けていた。
オレが芸能界を辞めてしまったら、里奈のブランドの知名度は落ちていき、コレクションに参加するのも危うくなっていた。
「このままじゃ……Ripshはクローズダウンだわ。
私は俳優本橋ルイのネームバリューで一時這い上がっただけのお零れデザイナーなのよ」
そうやって辛そうに顔を歪ませて、オレの前で泣き崩れる里奈。
普段は
毅然としていて
決して見せない弱さをオレに見せる。
それはきっと、
里奈のブランドデビューに投資をして一役買ったオレだったから、
芸能界を捨てた今でも頼りにされているのは分かっていた。
投資したのだから、やはりビジネスとしてこのブランドをアパレル業界に浸透させたい。
「オレのネームバリューだけじゃない。
里奈は有能なデザイナーとしてオレが買ったんだから、何がなんでも成功させて、生産が追いつかないようにしてやるよ」
オレはそう言って里奈を安心させた。
まずはナオトから借りたお金を返さなくてはいけない。
里奈とビジネスパートナーとなったからには、収益のマイナスをプラスに転換していかなくては……
オレ個人の収入も安定させたい。
ミユキとの子が生まれたら、オレはイクメンに徹したいから。
生活の基盤を安定させなくては。
そして収入はあればあるほどいい。
「でも、今更カネ返せってナオトも嫌らしいな。投資じゃなかったのかよ?」
「私が返すって言ったの。関係を終わらせたかったから」
「体の?」
「……ええ」
「それとこれは関係ないだろ」
「関係ないと思っていたけど、ナオトは納得しなかった。ナオトがそれほどまでに私に執着していると思わなくて……」
「執着……?」
「ビジネスパートナーとして一緒にやらせてくれって言われてたけど、断っていたの。
私情も入ると面倒だったから……ナオトとは夜だけの割り切った関係だと思っていたし。」
里奈は声音を小さくして、オレから顔を逸らした。
逸らした横顔は
何か思いつめていて苦しそうだった。
ーーー今、オレは
里奈とスタジオから近くのカフェに来ていて昼食を取っている。
オレと里奈が注文したランチはロコモコ。
オレはとっくに平らげたのに、里奈は殆ど残したままだった。
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