20人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ、戻ろうか?」
里奈が落ち着いてきたのを見計らって、静かにそう言葉を放った。
これから、メンズ雑誌の掲載内容についての打ち合わせがある。
ナオトをモデルとして出してくれと要請があったのを丁重に断らなくてはいけない。
納得していただくカタチで話を進めていくのに、一苦労する。
ナオトがなんせ急に仕事を降りたもんだから余計な労力を増やされた。
「里奈もあまり思いつめないでさ。オレが何とかするから」
メンタルフォローもしてあげないと、商談や打ち合わせにも支障が出てしまう。
「ごめんね、色々迷惑かけて」
申し訳なさそうに力なく里奈は微笑んで、伝票を掴んだ。
それを合図にオレたちは立ち上がり、すぐ傍にあったお会計に足を向けたら、
見た事あるような後ろ姿が視界に入る。
「あれ?ヨシ」
その見た事あるようなメンズは
オレの恋敵だったミユキの元カレのヨシ。
最近彼女が出来たと聞いて、ホッとしていた。
オレも仕事で忙しくなるし、いちいちミユキとヨシの接点に気を揉んでる暇もなかったから、
ミユキに対する未練を隠せずにいたヨシが新しい恋愛に足を踏み出した事はかなり喜ばしかった。
……これで、ミユキがちょっかい出される事もない……
ヨシは彼女と一緒にいて、オレは偶然にもヨシのデートに出くわした。
彼女は柔らかい雰囲気で、ガーリーコーディネートに身を包み、ミユキと同じくらいの年に見えた。
あ……でも
同級生の彼女って言ってたな。
「彼女と一緒?」
オレは満面の笑みを押さえきれず二人の顔を見比べて訊いた。
「ああ、彼女がここのカフェで食事してみたいって言うから」
ヨシは彼女の肩を優しく抱いている。
「そうなんだ。はじめまして」
オレはヨシの彼女に満面の笑みを向けた。
「行くぞ、彩佳」
「う、うん……」
ヨシは彼女の肩を抱いたまま、外に促した。
そこまでは良かったけど、
ヨシの口から思いもしない事を告げられる。
「じゃ、リューマも不倫楽しんで!」
最初のコメントを投稿しよう!