第1章

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は? 「彼女はオレのデザイナーだよ」 不倫なんて……そんな風に見えんの? でも、オレの仕事環境を知らなければ、そう見られてもしょうがないのか。 ……とゆーか、 冗談でもヨシにそう言われるのは、かなり心外。 オレが不誠実な男だと決めつけたいような、さ。 そうゆう思いで不快感を露にヨシを見返したら ヨシの表情はからかいを含んでいて、ニヤリと口の端を上げている。 ちぇ。 おちょくられたのか。 「どっちにしろ、美人を泣かすなよ」 ヨシがチラッと里奈に視線をやって、意味ありげにそう言い放った。 ……見られてたのか。 オレたちの存在に気づいていながら ヨシはシカトして店を出ようとしたのか。 仕事だと言っても、里奈が泣いている状況を見られたら、 信憑性に欠ける。 せめて、ヨシを捕まえて弁解出来て良かった。 別にミユキに告げ口されても、 里奈の事を知ってるし、誤解される事はないんだけども。 「じゃ」 ヨシは足早に手を挙げてその場を去って行った。 ……なんか、後味が悪い。 「私たち、なんか勘違いされちゃったみたいね」 里奈が眉尻を下げて、困った様な表情をした。 「今のはミユキのサロンの同僚だよ。別に変な事していたワケじゃないし、気にする事ないよ」 そう自分にも言い聞かせて、オレたちは里奈のスタジオに戻った。 …………里奈の頬に触れてしまった事を少し気にかけながら………… そこまで見られていなかった事を祈って。
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