第1章

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トレンド発信者となるデザイナーがいて、それを買ってくれるクライアントがいる。 そのクライアントが広告費を肩代わりして、タイアップしているファッション誌の広告ページや、コレクションショーの運営費を出資していた。 クライアントは、里奈がデザイナーとして活動できる必要不可欠なエネルギー源だ。 オレは里奈がデザイナーとして活躍を続けて欲しいから、以前はクライアントに近いポジションにいたんだけども なんせ、広告費を出資出来るほどの資金を今は持ち合わせていない。 通常、知名度のあるデザイナーは売りの分野には関与しない。 デザイナーはあくまでも服のデザインだけにとどまるのが、当たり前だから。 でも、オレと里奈が組むメリットは 里奈は本望としないところだけど 里奈には購買意欲を駆り立てるトレンドを抑えた服をデザインしてもらいカタチにして、オレがどんどんクライアントにアピールして売り込んで行く事。 ナオトは里奈の直属モデルとして、オレが芸能界にいた時と同様の稀少価値が Ripsh以外のモデルをしないスタンスでいたナオトにはあって、 ブランドの顔にもなってしまったところに、行き詰まりの原因があった。 里奈はモデルに依存していたから、 真のブランド力を発揮出来ずにこんな事を招いてしまい、 オレが芸能界を辞めたり、ナオトがモデルを辞めたりしただけで クライアントから契約を断たれてガタがきていた。 「作りたい服だけを作っていても、もう受け入れてもらえない時代なんだわ」 「今はトレンドをすぐカタチにして、クライアントに買って貰うことを優先にしないとダメなんだろうな。 逆だけど、クライアントの要望とする服をデザイナーが作る方が、理に叶ってる」 「私金儲けのためにデザイナーになったんじゃない」 里奈は唇を噛みしめるけど 利益にならないものは、自己実現だけで満足してしまっていて結果が伴っていない。 デザイナーとしてのプライドを傷つけたくないから 口に出しては言わないけども。 「綺麗事は言ってられないよ。クライアントを満足させないと、里奈のデザインした服の良さは伝えていけないんだから。 里奈は元々持っているブランドのカラーを極力崩さないで、クライアントの欲するモノをデザインしていけばいいんだよ。 今は流行が全てだし、個性を貫くにはまだブランド力が弱すぎる。」
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