第1章

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やっとファッション誌の担当者と話の折り合いがついて、 オレと里奈はショップ兼オフィスのデスクでコーヒーを飲みながら今後の対策を練っていた。 「これからは、直属モデルは抱えないでモデル事務所で借りた方がいいな。 ナオトみたいな事態を防ぐためにも。」 モデルに依存する里奈は、モデルを近くに置く事で、モデルに合わせた服をデザインする傾向にあった。 だから、そのモデルが着こなせば間違いなくその服は映えて、ショーでは見映えする。 里奈はオレの言葉に耳を傾けるだけで静かにコーヒーを啜っていた。 里奈はランチのカフェで涙を流してから、どことなく覇気がない。 プライベートでナオトの事で思い悩んでるのか この先のブランドの行先の不安なのか その両方なのか……。 オレからしてみれば、里奈がオレの望む通りに服を作ってくれれば、これからガンガン売り込んでいける自信はあるんだけども 当の本人はデザイナーとしての自信を喪失しかけてる。 「里奈……。オレは里奈のデザインした服が好きなんだよ。 方針が里奈の思い描くものとは違うかも知れないけど、今はまだ知名度を上げていく下積みが必要だと思う」 里奈には多くのユーザーを虜にするデザイナーになって欲しい。 そして、それが利益を生む。 利益が結果。 「分かってる。自己満足だけではデザイナーは続けていけないのよね」 里奈は苦い顔して笑った。 「これから会う委託の商談は絶対モノにするから。里奈はブランドの方向性を分かりやすくプレゼンして。オレはユーザーのニーズを抑えたプレゼンするから」 「……ええ。」 これから、委託するアパレル会社は取れたらデカイ。 都内に店舗を持ち、他のブランドも委託販売していて、顧客獲得を強化している。 立地条件がいい場所に店舗があるので 集客力はかなり見込める。
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