第1章

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「ダメ……。ヒロキの携帯に繋がらない……」 頭を抱えていると 絶望的な里奈の声がしてオレは顔を上げた。 「しょうがないからオレが行くよ、今から」 忌々しく、言葉を吐き出す。 もう切り上げて帰ろうと思っていたのに。 寝不足とここ最近の過労が、上乗せしすぎてもういい加減仕事からしばらく離れたかった。 けど、そんな事言っていられない事態が立て続けに起こって、今回もどうにか出来るのは、自分しかいない。 「私も行く」 里奈もそう言ってコートを手に取ったけど、里奈はスタジオでの雑務がたくさん山積みになっている。 「いいよ、オレが行って謝ってくる。」 そう言ったのと同時にオレはオフィスを出た。 急いでタクシーに乗り込み、現場に急いだ。 20分ほどで新店Ripshの前に着くと、慌てて打ち合わせの場に足を踏み入れ、クライアントや関係スタッフに頭を下げた。 「ナオトやヒロキが……ご迷惑を……おかけして申し訳ありません」 「モデルさん達が揃いに揃ってドタキャンするなんて一体どうなってるんですか。明日の本番潰す気ですか?」 当然の様に企画の担当者から怒りの言葉が飛んできた。 ナオトの野郎が抜けてからオレはどれだけ、頭を下げた事だろう。 マジで ナオトやろー、 こんなに迷惑かけて 1000万の借りをチャラにしてもらう他、気がすまない。 ……結局。 オレが急遽代役を務めるハメになり、 開店セレモニーのゲスト対談や1日の流れを把握しなくてはならない状況に追いやられた。 「疲れた……」 ピリピリしていた打ち合わせを終了して、 ぐったりと項垂れる。 「お疲れさまです、リューマさん。今日は散々なご様子でしたね」 新店の店長が、苦笑いをしながらオレに労いの言葉をかける。 元モデルのイケメン店長は、打ち合わせを終了するも、明日のオープンまで夜通しで仕込みを続けるそうで、 忙しなくストックの服を腕に抱えながら右往左往していた。 企画の関係者はもうとっくに帰ってしまい店舗には店長とオレだけ。 スタッフルームのソファに腰かけて、背もたれに体を預ける。 身体がソファに張り付くように、オレは身動きが取れなくなった。 ねむい……。 今何時だ? 11時? ……12時? ミユキに連絡しないと……。
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