20人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………ーマさん……。」
「…………」
「リューマさん……」
オレの名前を呼ぶ声に、
オレは意識が覚醒してきて、ゆっくり瞼を開けた。
「…………あれ…………」
店長の池谷さんがオレの顔を覗き込んでいる。
「リューマさん、もうお帰りになったと思ったら……まだスタッフルームにいたんですね」
向かいのソファに座りながら、池谷さんもお疲れ気味の表情を浮かべている。
寝ぼけた頭で時間の感覚を取り戻そうとした。
だいたい何時に打ち合わせが終わったのかさえも把握していなかった。
腕時計に目をやると
「うげ……マジかよ……」
なんと時刻はすでに夜中の3時を回っている。
あ、ミユキに連絡するの忘れた。
今日早く帰るって言ったのに。
はあーっと盛大に溜め息を吐き出して、前髪をグシャリと荒々しく掻き上げた。
スマホを確認しようとしたら
……スマホがない。
もしかして……
里奈のオフィスを慌てて出てしまったからオフィスのソファの辺りに放置したままかもしれない……
里奈はもうとっくに帰ってるだろうな。
ミユキに連絡取りようがない。
タクシーで家に直帰したいけど、どっちにしろスマホを朝取りに行くとしても、朝だと遠回りになる。
しかもこの場所に、5時間後にまたやって来なきゃならない。
はぁー、めんどくせーな……。
とりあえずオフィスに戻って、
スマホと明日のスケジュールの調整をしてから、里奈の事務所に置いてある車を借りて家帰るか。
ミユキ……心配してるだろうな……。
ミユキの事が気がかりになりながら
目の前で夜食を取ってる店長の池谷さんを見ると、オレの素振りでスマホを所持していないのを察してくれて
「スマホ見つからないんですか?店の電話使います?」
とコードレスフォンを差し出してくれた。
「ありがとうございます……スマホを事務所に忘れてきたみたいで」
最初のコメントを投稿しよう!