第1章

2/32
前へ
/32ページ
次へ
トイレットペーパーや、夕飯の材料を買い終えて いざ両手に持つとあまりの重さに顔が引きつる。 「おも……」 一度で買い物を済ませようと横着したら、牛乳などの飲料が重さを増して、買い物袋が手指に食い込む。 やっぱり買い物は1人じゃ大変。 車があった方が便利なんだけど、 都内に住んでいて休日だけの使用は、 いささか維持費が勿体無い気がして、購入までに踏み込めなかった。 ……リューマは必要としているみたいだけど。 リューマは移動が面倒みたいで、仕事専用の車をそろそろ買おうという話もあった。 しかし、里奈さんのスタジオからの移動は里奈さんの仕事用の車を使える事になったので、マイカー購入は保留になったのだ。 ……せめて 買い物は二人でしたい。 まめに買い物が出来ないために、どうしても 休日にまとめて買い込んでしまうから 1人でそれらを運ぶのはとても大変だった。 それでも、引きちぎれそうな買い物袋を、必死で掴んで5分ほどの距離の自宅マンションまで歩いた。 あともう少し…… 今度は絶対エコバックを忘れないようにしよう。 プラスチックの買い物袋は 今にも重さで引きちぎられそうで、 冷や冷やしながら無事自宅まで帰れる事を祈った。 そんな時。 プップー!とクラクションが鳴らされて その車を仰ぐ。 「ミユキさん、大変そうだね。 一人で買い物?」 私の歩く横の車道で ハザードランプを点滅させた白のベンツの左側の運転席から、 ナオトさんが顔を覗かせていた。 一瞬、誰だか分からないくらいに驚いて、 白ベンツがイヤミなくお似合いの甘いマスクのナオトさんをマジマジと見入る。 まさかこんな所でナオトさんと偶然会うとは思わなかった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加