第1章

23/32
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
リューマが‥…… 帰って来ない。 仕事中のリューマに 電話なんてほとんどかけた事はなかったけど なんだか凄く心配になって ついスマホを手に取りリューマの電話番号を発信してしまった。 朝、 『今日は早く帰るから』 って言ってたのに。 遅くなるなら連絡くらいしてくれたらいいのに。 時刻は21:15分。 電話をかけたけど、何度かコールがかかった後、出る様子はなく留守電になった。 空腹だったけど、 リューマから何の音沙汰もない事が気になって 何か食べようとするのも忘れて 仕込んでおいたグラタンもそのままにしたまま、 シャワーを浴びた。 『今夜、リューマは帰って来ないよ』 ナオトさんの根拠のない忠告が 現実になってしまった。 今夜はリューマと一緒に食事をしたかった。 ずっとすれ違いでも、たまに一緒に食事が出来ればそれで良かった。 早く帰って来れなくても、日付が変わるまでには帰って来て欲しい……。 温かいシャワーを浴びながら ジンワリ涙が滲む。 ‥……気にするな。 帰りが遅くなったくらいで。 きっともうすぐ帰ってくる。 連絡してくれないのだって 充電がなくなったからとか そんな些細な事に決まってる。 私はリューマの妻なんだから こんな事で不安になってたら リューマの妻は務まらない。 「早く帰ってきて……」 思わず呟いて、シャワーを出る。 する事も見つからず、テレビを見る気も失せて、ベッドに潜り込む。 23:25分。 ベッドの中からスマホを握りしめて、発信記録からリューマの番号を発信した。 お願い……。出て……。 願いも虚しく、 発信コールが数回鳴った後、留守電に転送された。 リューマ、信じてるから。 ナオトさんに何言われても。 リューマが私を『信じてる』って言ってくれたように……。 だから 早く 帰ってきて。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!