第1章

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いくら里奈さんと仕事で時間を共にしていたって 夜を共有しているのは妻の私だけ……。 それが唯一、私が有利に立っている特権だし、そう自覚する事で気持ちが和らいでいった。 『夜のパートナーまで引き受けていなければいいけどね』 ナオトさんの声音を低くして放った言葉が胸を刺すけど、 今までリューマが朝帰りした事は一度もない。 いくら終電を逃しても、タクシーで帰ってきてくれた。 私はスマホをバッグから取り出して、リューマから何かメッセージが届いていないか確かめた。 けど、特に何もない。 『今日は何時頃に帰って来れそう?』 夕飯をリューマの帰宅に合わせて作ろうと思ったから、そうメッセージを打ち込んで送信した。 決して、ナオトさんの忠告を気にしたんじゃなくて。 そう自分自身に言い訳しながら……。 今日の夕飯はシーフードグラタンとアボガドサラダ。 グラタンはリューマの帰宅時間を見計らってオーブンに入れよう。 コーヒーを飲み終えると、流し台にマグカップを置いた。 時刻はもうすでに6時を過ぎようとしている。 私は大きく溜め息をついて、 とりあえずリューマから返事がくるまで夕飯の仕込みをする事にした。 先にアボガドサラダを作ってラップをして冷蔵庫に入れる。 そしてダイニングテーブルに置いてあるスマホに視線を向けた。 新着メッセージを示すランプは点灯しない。 「忙しいのかな……」 つい言葉が口から漏れる。
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