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いくら里奈さんと仕事で時間を共にしていたって
夜を共有しているのは妻の私だけ……。
それが唯一、私が有利に立っている特権だし、そう自覚する事で気持ちが和らいでいった。
『夜のパートナーまで引き受けていなければいいけどね』
ナオトさんの声音を低くして放った言葉が胸を刺すけど、
今までリューマが朝帰りした事は一度もない。
いくら終電を逃しても、タクシーで帰ってきてくれた。
私はスマホをバッグから取り出して、リューマから何かメッセージが届いていないか確かめた。
けど、特に何もない。
『今日は何時頃に帰って来れそう?』
夕飯をリューマの帰宅に合わせて作ろうと思ったから、そうメッセージを打ち込んで送信した。
決して、ナオトさんの忠告を気にしたんじゃなくて。
そう自分自身に言い訳しながら……。
今日の夕飯はシーフードグラタンとアボガドサラダ。
グラタンはリューマの帰宅時間を見計らってオーブンに入れよう。
コーヒーを飲み終えると、流し台にマグカップを置いた。
時刻はもうすでに6時を過ぎようとしている。
私は大きく溜め息をついて、
とりあえずリューマから返事がくるまで夕飯の仕込みをする事にした。
先にアボガドサラダを作ってラップをして冷蔵庫に入れる。
そしてダイニングテーブルに置いてあるスマホに視線を向けた。
新着メッセージを示すランプは点灯しない。
「忙しいのかな……」
つい言葉が口から漏れる。
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