01

8/33
前へ
/157ページ
次へ
どうしてだろう?なんかちょっと気になる。 「なに、読んでんの?」 声を掛けると、固まっていた身体が、またビクッと揺れた。 「・・・・!」 だけど、やっぱり顔はあげてくれなくて、声も出さない。小さく小さく、首を横に振った。 ……まぁ、質問の回答は貰えないけど。 「ごめん、言いたくなかったよな?」 そう言うと、また身体を揺らす山下。 「っ!……、ち、ちが、ぃ…ます…。」 俯いたまま、俺の方を見ない山下だけど…蚊の鳴くような、小さな小さな声で答えた。絞り出したような声………初めて聞いた。 やっぱり、少し高い。 なんか、口元が緩む。 「おーいっ!奏!なにしてんだよっ!」 痺れを切らしたのか、幸吉が教室の外から俺を呼ぶ。 「あっ、悪い悪い!…、じゃあな、山下。また明日。」 それだけ声をかけて、幸吉のところへ。 後ろで、小さくヒクッとしゃっくりのような声が聞こえたけど、もう振り返らない方がいいなと判断した。 .
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

827人が本棚に入れています
本棚に追加