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幸吉と笑いあいながら、体操着から制服に着替えようと、机のうえに畳んだ制服を見ると、上に絆創膏が置いてあった。
…絆創膏?
俺こんなの持ってきてねぇけどな…。
誰かが間違えて置いたのか?いや、でも間違えて違うやつの制服の上に、こんなにわかりやすく置くものか?
「あれ、奏、ヒジ、なんかなってるぞ。ちょびっと血が出てる。」
幸吉に指摘されて気がつく。
ああ、そういえば、今日はサッカーしててボール争いの時、たまたま相手の爪がヒジに当たって引っかかれたんだよなぁ。
今の今まで忘れてた。
本当に、小さな小さな傷だ。幸吉もよく気付いたもんだな。
…あ、視力両方2.0だったな、こいつ。
と、そこでハッとする。
この絆創膏…もしかして…?
手にとって見つめる。
俺の傷に気付いてて、中敷をすり替える時に、置いてくれたのか…?
そう思うと、なんだかスッキリする。
…そうだとすれば…やっぱり好かれてる。
じわっと、胸の奥が暖かくなった。
うわぁ、なんか、この絆創膏、貼るの勿体無いなぁ。だってこれは、すり替え、じゃなくて、俺が貰ったものだ。
そして俺が好かれている証拠…かな。
「…こんな傷、舐めときゃ治るよ。ちょっと爪が当たっただけ。」
「え?とか言って、絆創膏持ってんじゃん。引っかき傷は油断なんねぇぞ?バイキン入って膿むかも!貼りにくいなら俺が貼ったる貼ったる。」
ひょいっと、持っていた絆創膏を幸吉に奪われてしまった。
「あっ、おい!」
ピリッと、絆創膏のカバーを剥がす音。
あ、、、せっかく持って帰ろうと思ってたのに…油断した…。
「はー?なんだよ、大きい声出して。ほれ、ヒジ出して!」
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