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「大丈夫か?」 必死にプリントを掻き集めるその姿に、声をかける。 「っ、?、!?」 ビクゥッと揺れる身体。相変わらずの、反応だなぁと苦笑いする。 プリントをばら撒いたのは、すぐにうつむいてしまった、山下だった。 おそらく、蹴つまずいて転んでしまったんだろう。それで、プリントもこの有様だ。周りは、山下を憐れむ目で見て、それでも助けることはなく通り過ぎていく。 白状な奴らだ。だけど、俺がプリントを拾い始めたのを見た数人が、慌てたように寄ってきてプリントを拾いだす。 そんな姿に、誰にもばれないように、小さくため息を吐いた。 誰かがやらないと、動けないのかよ。 「山下、相変わらず良く転けるよな。」 数人で集めたプリントを俺がまとめて、動けずにいる山下に差し出しながら声をかけた。 今日の体育でも転んでたもんなー。 いつも、どこかしらに絆創膏が貼ってある。 あ、耳、すげぇ赤くなってる。転けたのが恥ずかしかったのかな。 「!?」 俺の言葉に、バッと顔をあげて、だけどそれも一瞬で、すぐに俯向く。 …あ、顔、見た。 目が、合った。本当に、ほんのほんの、一瞬だったけど… 山下って、よく見ると、すげぇかわいい顔してるよなぁ。目だって丸くて、なんか小動物みてぇ… 「おーい、大丈夫か?どーせ、また先生にプリント運んでくれって雑用押し付けられたんだろ?」 いつまでも、立ち上がらず、俯いたまま、プリントも受け取らない山下。 俺は、どんな顔をしてるのか気になって、顔を覗き込むが、やっぱりよく見えない。 「っ、ぁ、…っ…」 山下が、なにかを言おうとして、だけど言葉に詰まって、結局首を小さく横に振った。 地面に着く手は、微かに震えている。 どんだけ緊張してんだ…?そもそも、人と会話することが苦手なのかもしれない。 .
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