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「じゃ、また教室でな。」
そう言って笑いかけ、俺に気付かず先に行ってしまった幸吉のあとを追った。後ろから、またヒクッとしゃっくりが聞こえて、軽く笑った。
山下って、変わってるけど、かわいーなぁ。
…って、さっきから俺、男に可愛い可愛いって…。
「おい奏おおお!お前どこ行ってたんだよっ!俺お前がいると思って喋ってたのに、気付いたらいねぇんだもん!めっちゃ恥ずかしかったんだからな!?」
後ろで聞こえた山下がプリントをばら撒く音も、俺がそんな山下を助けに行ったことも気付かずに喋り続けてたお前が本当に、すごいと思うよ。
視力めちゃめちゃ良いのに、視野が死ぬほど狭いのか?周りの音も聞こえてないのか?
と、思ったけど、いまの俺はすこぶる機嫌が良い。
「悪かったよ。」
「全然悪いと思ってねえ!ニヤニヤしやがって!!」
「声デケェよ幸吉。それよりプリント配るの手伝って。」
そう言ってプリントを半分、幸吉に渡すと、わけもわかってないのに素直に受け取る。
「…ん?あれ、なんで奏がプリント持ってんの?」
「いーから、配って配って。」
そう言うと、また素直にプリントを配り出す幸吉。……なーんか、将来悪い奴に騙されないか心配になってくるよ、お前を見てると。
「尾崎くん!私たちも手伝うよ!」
プリントを配り始めて、すぐ、女の子たちが数人話し掛けてきた。クラスの中では、わりと派手な女の子たちだ。
「大丈夫だよ、俺がやりたくてやってるから。」
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