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笑顔を作って、そう返すと、女の子たちは顔を赤らめてなにやら嬉しそうな顔をしている。
「えー!プリント配り、やりたいなんて尾崎くん本当に優しいねっ!じゃあ私たちも手伝いたいから手伝わせて!」
「…ほんとうに?ありがとう。」
きゃいきゃいと嬉しそうな女の子たちが、俺からあっという間にプリントを奪っていく。
そんなに楽しそうにプリント配りするなら、普段から率先してやればいいんじゃないのか?
なんてことが頭をよぎるけど、そういうことじゃないんだろうな。結局俺だって一緒だし。
優しくなんて、全然ない。
山下が、たまたま転けたから…、もしあのとき転けてなかったら、山下は1人で配ってただろうし、俺は、また山下が配ってくれてるよ、って思うだけだ。
後から教室に入ってきた山下を見つけ、プリントを渡しに行こうとすると、俺よりも先に幸吉が山下にプリントを渡した。
あ。
と、思ったとき、山下はパッと顔をあげて、笑顔で幸吉からそれを受け取っていた。
え?
モヤ、も胸の奥に霧がかかったような感覚に襲われた。
なんだ、これ。
どうして…
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