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戻ってきた幸吉は、出来上がった自分の卵を器に取り出してまたどこかに行こうとする。 「え、幸吉、それどうすんの?」 思わず幸吉に声をかけて引き止めた。 「ん?あー!山下の卵がかわいそーだから、俺のやつあげようと思って!ちょっくら行ってくるわ!」 1番優しいのは結局、幸吉だな。あんなに卵食べんの楽しみにしてたのに、そうやって簡単に人にあげちゃうんだから。 …俺が、見てないで先に声かけてたら、山下の俺のことをあんな笑顔で見てくれたのか…。 なんて、俺は打算ばっかりだ。こういうとき、つくづく自分が嫌になるよ。 半ば、押しつけるようにして山下に卵をあげた幸吉は満足げに、そして嬉しそうに俺のところへ戻ってきた。 「お前、優しいよな。なんだかんだ面倒見いーし。」 そう、幸吉に言うと、幸吉はキョトンと不思議そうな顔をした。 「別に優しくねーよ?今のはただの俺の自己満だし!つか面倒見いいのはお前の方じゃね?」 そうやって、サラッと言えるところが、お前の魅力なんだろうな。 「幸吉、俺の卵やるよ。」 「まじ!?ラッキー!ありがとうなっ奏ちゃんっ!」 最近、ストーカーのこととか、山下のこととか、考え事多くて、自分がめんどくせぇ~。 .
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