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いや、そもそも山下のことなんて考える必要はないんだ。うん、そう。
学校が終わって、今日はバイトの日だ。家で少しゆっくりしてからバイト先のカフェに向かった。
白いシャツ、腰にデニム色のエプロン。それからデニム生地のキャップを被る。俺的にはなかなかお洒落な制服だと思ってる。
このエプロンとキャップで気が引き締まるんだよなぁ。
「あ、尾崎くんおはよー。さっそくホールでて貰ってもいい?相変わらず、尾崎くん目当てのOLさん来てるわよ。」
出勤してすぐに社員さんにそう声を掛けられた。
今日は18時からの出勤で、ちょうど仕事終わりのOLさんが多い時間帯だ。
「おはようございます。もー、やめて下さいよ。俺じゃなくて、ここのラテアート目当てですって!」
確かに、俺のシフトを狙ったようにくるお客さんや、頻繁に声をかけてくるお客さんはいる。…だけどまぁ、それは個人店のカフェではよくあることだと思うし…そういったお客さんとお話しすることが俺の仕事だと思っている。
俺も楽しいし。
ストーカーは、実はカフェの常連客だったりして…いやいや、だったら学校の中で視線を感じるのはおかしいよな。それに、ここのカフェなら、高校生が来ればすぐにわかる。
おはようございます、と先に入っているメンバーに声をかけながらホールに出る。
「おっ、尾崎おは。これ、1番さんにお願い。」
「おはす。はーい。」
普段から可愛がってくれる先輩からカフェラテを受け取り1番テーブルに運ぶ。
「お待たせいたしました。カフェラテです。」
「あ!奏くんだっ!すごい良いタイミングっ、ラッキー。」
「ははっ、いつもありがとうございます。」
「奏くんのその笑顔見れると、明日も仕事がんばろって気になれるんだよね。あと、カフェラテも最高だし。」
妹から気持ち悪いと言われる笑顔で、人に元気を与えられるなら、これも悪くないよな。…と、思いたい。
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