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「こんなんで良ければ、いくらでも。あと、カフェラテも何杯でも飲んで下さいね。」 にこりと微笑めば、OLさんはほんのりと顔を赤らめる。 「もう、うまいんだからー。じゃあ、奏くんためにワッフルひとつ追加で。」 「え、本当ですか?ありがとうございます。」 俺、もしかして、ホストとか向いてるかもしれないなあ。って、桁が違うよな。 「ワッフルひとつ追加お願いしまーす。」 厨房へ向かって声をかける。 「おっ、さすが尾崎ちゃーん。この調子でどんどん頼むよ。」 「ちょ、ここ本当にカフェですか?」 「どんな店でも売り上げ貢献するスタッフは有難いんだよ。」 「ははっ、そうっすね、頑張ります。」 良い店だと思う。時給はそんなに高くないけど、この店のために頑張ろうと思える。 それって、滅多にないことだよなー。 できるだけ、笑顔で接客しよう、一人一人のお客さんを大切にしようと、そう思えたのはこの店で働き始めて半年以上が経った時だった。 店の営業が終わり、後片付けに、ゴミを外のゴミ捨て場に持って行った時だった。 また、あの視線だ。 …、店で視線を感じたのは、初めてだ。でも、本当は前にもあったのかもしれないなぁ。 時刻はもうすぐ9時半なる。まさか、家までついてくるなんてこと、ないよな? そんなことを考えて、一瞬止まった手を再び動かして仕事に戻る。 片付け作業はスムーズに終わり、タイムカードを押す。もう22時だ…さすがに、帰ってるだろうな…と思いながら他のスタッフに別れを告げ、1人、帰路を進む。 ………見られてる。 .
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