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「…なーんか、奏ちゃん最近機嫌悪くね?」
悶々とする日々の中、俺は今日も考えごとをしていた。そんな時に、幸吉のそんな言葉。
「は?そんなことないだろ。」
嘘じゃない。だって別に、機嫌が悪いわけではないのだから。
「その割には、眉間にシワ寄せて、むってしてること多くね?」
…ただ、考えごとしてるだけなんだけどなぁ。
「…あー、あれかも。暑くてさ、頭に血が上ってんだよ。熱中症かな?夏バテ?」
梅雨の季節になった。
毎日ジメジメしてるし、雨はよく降るし、なんか虫も多い。
だけど今日も、感じるあの視線。
雨の日も、めちゃめちゃ暑い日も。
俺は未だに、ストーカーに完敗続きだ。
身の回りのものは、どんどん新品になっていくし、あの電柱の後ろの影にも負けっぱなし。
この間なんて、3時間だ。
3時間、俺はあの影を見つめつづけた。…揺れる影は、一向に姿を現さない。一体、何時間そこにいたんだ…
あと、雨の日なんかは、また心配になる。いくら梅雨で暑いとはいえ、雨の中、外にずっといるとなると、体調も崩すだろうし、季節の変わり目はさらに危険だ。
“ 好きな人できた?”
繰り返される妹の言葉。
「いや、違う、そうじゃない。」
「え!?なにが!?」
・・・無意識のうちに、勝手に言葉が出てたらしい。
「いや、ごめん独り言。」
これは、…単なる好奇心、だよな。
「奏ちゃん熱でもあるのか?」
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