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緩む頬を、必死で引き締めた。
けど、やっぱり耐えきれなくて、俯きながら俺の横を歩く女の子が、俺の様子を伺うように、チラリとこちらを見たタイミングで俺はその子に微笑みかけた。
あくまでも、顔の緩みが自然に映るように。
彼女には、申し訳ないけど…俺は今、このぞくりとするような視線のことしか考えられない。
顔を赤らめた彼女に、ざわりと少しの罪悪感。
やっぱり俺は、優しい人間なんかじゃない。
「好きですっ!」
人気のないところまで来て、そう告げられた。
好意は、素直に嬉しいと思うようにしてる。
「…ありがとう。」
それしか言わない俺に、彼女も何かを察したのだろう。うっすらと目に涙が浮かぶ。…きっと、この子はいい子なんだろうな。
逆上した子もいたし…いきなり抱きついてきた子もいた。既成事実を作ろうと必死な子も…
「…、やっぱり、尾崎くんは、優しいね。」
「そんなことない。気持ちは、素直に嬉しいと思う…けど、俺は、君の気持ちには応えられない。ごめん。」
頭をさげる。
「きっぱり振ってくれてかえってスッキリしたよ。最初から、期待はしてなかった。だって尾崎くん、いつも誰かのことを考えてるような顔してたから…」
「え?」
どきり、と妙な音を立てる俺の胸。
「だから、わかってたの。彼女…?それか、好きな人…?」
なんで、みんなそんなこと言うんだ。
「…え、いや…えっと…そういうんじゃ…」
「ふふっ、まさかこんなに動揺する尾崎くん見れるなんてっ!…最後に、よかった。ありがとう。」
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