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「あっ、ごめんな!」 すぐに振り返って謝ると、本をカバンに仕舞おうとしていたその席に座っている人物は、ビクッと肩を揺らし、俺の方を見ることもなく、俯いたまま小さく首を横に振った。 長い前髪と、ふわふわっとした癖っ毛のせいで、表情は確認できない。 俺のは正反対の席に座るその人物。 俺は、窓際の1番後ろ。 遠いから、今まで話すこともなかったけど。 特に意味もなく、じーっと見てると、死んだように動かない。…けど、足は少し震えていた。 …嫌われてんのか? いや、でも嫌われるようなことしてないよな? あー、表情が見えない。 こっち、見ないかな。 いつも、隅の方で静かに本を読んでいる。体育のときは良く転んでいるけど、なんだか必死。授業が終わるといつも率先して黒板を消している。身長は低めで、身体も細い。声は……まだ聞いたことがない。でも、イメージでは少し高そう。友達は……多分いる。 名前は………山下 要(やました かなめ) 俺はなぜか、山下の目を見てみたい。 .
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