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「こんばんは..」
お母さんに先に行っててと車から追い出されて、一人寂しく玄関先で挨拶した。
すると、バタバタと数人の足音が聞こえたと思ったら数人の子供がいきなり抱きついてきた。
「おねーちゃん遊ぼー」
「「遊ぼー」」
ゆさゆさと揺さぶられ身動きがとれなくなる。
「ま、待って動けないよ」
「えー?遊んでくれないのー」
子供達の勢いに圧倒されて、自然と視界が潤む。
「こら、お前らお姉ちゃんが困ってるだろ。離れなさい」
「「「はーい」」」
パッと放れるとお兄さんの元へ駆け寄る。
「じゃあ、ゆうひにいが遊んでよ~」
「分かったよ、ほら先に部屋に戻ってな。大人しく待ってるんだぞ」
「「「はーい」」」
元気よく返事をすると、バタバタと嵐のように走って行ってしまった。
私はただ呆然とその様子を見届けるしかできなかった。
「大丈夫だった?あいつらに悪気は無いから許してやって。そういえば君って翔ちゃん?」
無邪気な笑顔で言うお兄さん。この人誰?親戚の人ってことは違わないんだろうけど。
「だ、誰ですか?」
私がそう訊ねると、はっとしたように補足した。
「わりぃわりぃ、俺は宇佐見優陽(うさみゆうひ)翔ちゃんのことは父さんから聞いたんだ。宇佐見透っていうんだけど」
透さん。あ、お母さんの弟さんだったかな。お正月に会ったときに高い高いをされた記憶がある。透おじさん、背高いから凄く怖かった..。
「透おじさん覚えてます。息子さんなんですね」
「おう、それで少し訊きたいー」
「ゆうひにいまだーー?」
ひょっこりと廊下の角から顔を出して、優陽さんを呼ぶ男の子。
「あー、ごめんな!後でゆっくり話そう。じゃあな」
そう言い残すと彼も奥へと消えて行った。
彼が行ってしまったことで玄関で一人になってしまった。
なにはさておき、お姉ちゃんに 挨拶に行こう、うん。そう思い歩みを一歩踏み出そうとしたとき、
「あら、翔まだここにいたのね」
「あ、お母さん..うん」
お母さんの方へと方向転換する。
「まだ夏美のところには挨拶行ってない?」
「うん。これから行くとこ」
ちなみに夏美とは、従姉のお姉ちゃんの名前です。
私がう返答すると、行きましょと促しお姉ちゃんの元へと向かった。
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