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お前は空港で
日本人観光客をうまく捕まえ、
娘達が手配してくれた
ホテルまで案内してもらい
無事に記帳を済ませることができた。
そういえばお前はよく言ってたな。
「地図はなくても口さえあれば
人に聞いてどこにだって行ける」
まさか異国の地でも
そうするとは思わなかった。
皿が包まれた小さな風呂敷を
お前に預けられた
ベルボーイの不思議そうな顔は
実に愉快だった。
なに、この歳になると
風呂に入らなくても
汗はかかないし
着替えなくても2、3日なら
事足りるのさ。
若い奴らにはわからんのかもな。
お前は同じホテルに宿泊をする
日本人観光客をまた捕まえて
スペイン広場へとやって来た。
日本語だけでジェラートを買い、
あの映画のヒロインのように
階段に腰を掛けた。
ジェラートを口にしたお前は
ずっと昔の結婚式の時のように
唇をきゅっと結んで
旨いのか不味いのか
表情からはわからない。
お前が2口めを頬張ろうとしたとき
体の大きなイタリア人が
なんかかんかとお前に言った。
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