ふたりの時間

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 お前は今でも俺の話をしてくれる。  サンタクロースの正体を  見たがる聞き分けのない曾孫に 「死んだじいちゃんは子供の頃に  クリスマスの夜中にふと目が覚めて  窓の外に空へと飛んでいく  トナカイの尻尾をみたそうだけど」 「トナカイの尻尾を見た翌年から  じいちゃんのところへは  サンタクロースは来なくなったと  話していたよ」 「サンタクロースの姿なんか  見ようとしないほうがいい」  ずっと昔にまだ小さかった孫達に  俺が話してやったそんなことを  お前は覚えてくれている。  なぁ、お前。  そろそろこっちへ来てくれないか。  苦労をかけた侘びをするから  今までろくに聞いてやらなかった  お前の話を聞かせておくれ。  俺のせいで苦労をかけた  貧しい日々の愚痴だって構わない。      できれば一緒に行けなかった  あの旅行でお前が  何を感じたのかを  俺に教えてくれないか。
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