ふたりの時間

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 お前をまともに見たのは  俺の家で挙げた精一杯の結婚式の  三献の儀のときだった。  盃を持つお前の手を見て  なんて小さくて  ふっくらした手だろうと感動した。  お前の顔をまともに見たのは  式が終わり、  ぼつぼつと帰りはじめる  親戚たちを見送る場での事だった。  周りの奴らに気取られぬよう  こっそりとさり気なくお前の顔を見た。  たらふく酒を飲んで潰れてしまった  俺の弟の様子を見るふりをして  お前のことを盗み見た。  申し訳ないことに小さな手を見て  期待をふくらませ過ぎたせいなのか、  決して器量良しとは言えないお前に  惚れただとかのそういった  浮ついた感情は生まれなかった。  緊張のせいなのか  唇をきゅっと結んだ表情は  まぁ、悪くはないと思うことにし  自分自身を納得させた。  お前が大変だったのはそれからだった。
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