1人が本棚に入れています
本棚に追加
お前をまともに見たのは
俺の家で挙げた精一杯の結婚式の
三献の儀のときだった。
盃を持つお前の手を見て
なんて小さくて
ふっくらした手だろうと感動した。
お前の顔をまともに見たのは
式が終わり、
ぼつぼつと帰りはじめる
親戚たちを見送る場での事だった。
周りの奴らに気取られぬよう
こっそりとさり気なくお前の顔を見た。
たらふく酒を飲んで潰れてしまった
俺の弟の様子を見るふりをして
お前のことを盗み見た。
申し訳ないことに小さな手を見て
期待をふくらませ過ぎたせいなのか、
決して器量良しとは言えないお前に
惚れただとかのそういった
浮ついた感情は生まれなかった。
緊張のせいなのか
唇をきゅっと結んだ表情は
まぁ、悪くはないと思うことにし
自分自身を納得させた。
お前が大変だったのはそれからだった。
最初のコメントを投稿しよう!