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お酒に強いと思っていた朴さんが、
逆に飲まれてしまっていた。
「悪い……下ろして」
居酒屋を出て、飲んでいない私の運転する車中で限界を迎える。
「あ、はい!」
バスじゃないので、ビニール袋なんか用意していない私は、言われるがまま、山中の道端に停車。
降りて苦しそうにする朴さんの背中をさすってあげた。
「……ハァ……やべぇ……」
あと何百メートルか先に、入る予定だったラブホがある。
そのきらびやかな下品なイルミネーションがとても遠くにあるように感じられた。
「…だいぶ…スッキリした」
私は出席しないけれど、度々ある会社の懇親会や歓送迎では朴さんはいつも楽しそうに飲んでいるらしく、潰れたとかの噂は聞いたことがない。
(閉鎖的な私の耳に入ってこないだけ?)
「車……乗れそうですか?」
過去に、会社の誰かにこんな姿を見せたことがあるのだろうか?
「……う……ん。もう少し。
この山道の移動はくるかもしれない」
「あぁ。ですね」
……私にだけなら、嬉しいな。
なんて。
自惚れでやや歪んでるかもしれない価値観を悟られないように、
視線を少し手前にある自動販売機へと移し、
「あ、お水かお茶買ってきますよ」
頷く朴さんと車を置いてそこまではや歩きで向かった。
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