ゾンビアンドフィッシュ6

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『うわ、蛾がいる!』 夜の自販機に付き物のカメムシや蛾たち。 目を伏せがちに見ないように見ないように操作。 それが買ったお茶についてないことを祈りながら、 ガコン!とボトルのお茶を取り出す。 「朴さん、はい!ウーロン茶なかったんですけど」 戻ると朴さんは、 私の車の側で煙草を吸っていた。 悪酔いしても煙草は吸いたいんだ。 「ありがとう。…何でウーロン茶?俺、好きとか言った?」 私から緑茶を受け取りながら、 不思議そうな顔をしている。 「え?だって韓国といったら烏龍…あっ! 違うか、それ中国だ」 「……また、そんな間違い?」 ふふ……と笑いながら、緑茶をゴクゴク口にする朴さん。 「あ」 そのペットボトルの底に白い小さな蛾が張り付いているのを目撃。 「ん?」 「はは……いえ」 もしかしたら、蛾位でギャーギャー言うのは日本人だけかもしれないと思い、 見て見ぬふりをした。(おい) 「日本人は飲むお茶が少ないよね」 「そうですか?」 「うん」 蛾に気づかずにお茶を美味しそうに飲む朴さんの横に立って、 夜空に見える白い雲を視線が追いかけていた。 「韓国は、梅茶に柚子茶、トウモロコシ茶、ニンジン茶、たくさんお茶を飲むんだよ」 故郷を懐かしむような目をする朴さんの横顔が、意外と彫り深い事に気づいて、 ちょっとドキドキしている私。 「だから、韓国の女の人はキレイなんですね」 急に、 この人の奥さまの事が気になった。 「葵さんの方がキレイだよ」
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