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「葵さんの方がキレイだよ」
恐らく、私が一生に一度言われるか言われないかの言葉をサラリと言って、
私の肩を抱く朴さんは、
すっかり酔いはさめているようだ。
吐いたら楽になる人。
「……いや、私は日本人の中でもどちらかと言うと不細工の方だから」
韓国女性特有の肌ツヤツヤの美女が、
肩を抱かれながらも頭の中をチラついて、
そんな奥さんを貰った朴さんの目に、
私がどんなに色褪せて映ってるのかと思うと、
素直に浮かれる事ができなかった。
「葵さんは、自分を悪く言い過ぎなんだよ」
……それも、
わかってる。
自分で卑下し過ぎて、キツイ時あるもの。
「俺の好みは、派手じゃない女性なんだよ。それでいてキレイなら言うことない」
その私を、
唯一、浮き上がれない底から、
少しずつ這い上がらせてくれたのは、
間違いなく、この既婚者の朴さんだ。
__奥様、
ごめんなさい。
「口、拭いたから、
キスしてもいい?」
もう少し、
あなたの旦那様、
私にお貸しください。
朴さんは、
私の手を引っ張って、
誰もいなくなった鉄工所の倉庫裏へと移動し始めた。
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