20人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に戻ると、まず猫の身体を柔らかいバスタオルで丁寧に拭いてやる。
「冷えた体はどうすればいいのかな…」
悩んだ結果、ホットミルクを飲ませることに。
冷蔵庫にあった牛乳を温めて、子猫の前に置く。
猫は恐る恐る、舌を入れた後に、ホットミルクを飲み始めた。
「カワイイ…」
子猫の頭を撫でる。
ふわふわの毛並みの感触が、とても心地よかった。
その夜は、ベッドに子猫と2人並んで眠りについた。
単身、HUNTER×HUNTERという異世界にやってきて以来、初めて感じた安らぎに満ちた夜を過ごした。
☆
目の前に置かれたワイングラスを、眉間にしわを寄せて睨む。
2日間で、水見式の変化を向上させるのは、いくらトリップ補正がなされていても無理難題らしい。
やはりというか、何というか…。
「……でも、やらなきゃ」
幻影旅団の強奪を止められるとは思わない。
でも、何もしないで黙っているのも違う気がする。
──何をするために、私は……この世界にやってきたんだ?
『正義の味方になるため』
自分の深い心に潜む、別の自分が答える。
──正義の味方。
正しきを貫き、悪には相応の鉄槌を下し、弱い立場の人々を助ける。
……助けられる、だろうか。私は。
一抹の不安が生じ、たちまち顔を曇らせる。
今までガムシャラに突っ走ってきたため、そんな事を考える暇はなかった。心に余裕が出来た証だろう。
だが今は、そんな不安を感じている場合ではない。
弱気を振り払うように、頭を左右にブンブン振る。
「……強くならなきゃ」
自分に言い聞かせるように呟き、再びグラスに手をかざす。
精神を集中して、『練』へと転じさせた。
そんな少女を、昨晩出会った子猫はじっと見つめていた…。
最初のコメントを投稿しよう!