第2弾「イレギュラーなりに」

4/5
前へ
/33ページ
次へ
部屋に戻ると、まず猫の身体を柔らかいバスタオルで丁寧に拭いてやる。 「冷えた体はどうすればいいのかな…」 悩んだ結果、ホットミルクを飲ませることに。 冷蔵庫にあった牛乳を温めて、子猫の前に置く。 猫は恐る恐る、舌を入れた後に、ホットミルクを飲み始めた。 「カワイイ…」 子猫の頭を撫でる。 ふわふわの毛並みの感触が、とても心地よかった。 その夜は、ベッドに子猫と2人並んで眠りについた。 単身、HUNTER×HUNTERという異世界にやってきて以来、初めて感じた安らぎに満ちた夜を過ごした。 ☆ 目の前に置かれたワイングラスを、眉間にしわを寄せて睨む。 2日間で、水見式の変化を向上させるのは、いくらトリップ補正がなされていても無理難題らしい。 やはりというか、何というか…。 「……でも、やらなきゃ」 幻影旅団の強奪を止められるとは思わない。 でも、何もしないで黙っているのも違う気がする。 ──何をするために、私は……この世界にやってきたんだ? 『正義の味方になるため』 自分の深い心に潜む、別の自分が答える。 ──正義の味方。 正しきを貫き、悪には相応の鉄槌を下し、弱い立場の人々を助ける。 ……助けられる、だろうか。私は。 一抹の不安が生じ、たちまち顔を曇らせる。 今までガムシャラに突っ走ってきたため、そんな事を考える暇はなかった。心に余裕が出来た証だろう。 だが今は、そんな不安を感じている場合ではない。 弱気を振り払うように、頭を左右にブンブン振る。 「……強くならなきゃ」 自分に言い聞かせるように呟き、再びグラスに手をかざす。 精神を集中して、『練』へと転じさせた。 そんな少女を、昨晩出会った子猫はじっと見つめていた…。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加