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「実はですね…その暗黒大陸からこちらに持ち帰った『遺産』が、突如消えてしまったんです」
声を潜めてそう言ったビーンズさん。
遺産…ねぇ?
「えーっと、よく分かんないけど、消えたって、盗まれたってこと?」
「その可能性は低いでしょう。あれを持ち出せるのは現時点ではハンター協会の会長…つまりネテロ会長のみ」
訝しげに思った私は間髪入れずに問う。
「でも、ネテロさんがそんな事する?」
「ですから、遺産自ら行方を眩ませているのではないかと…」
厳重に管理していたんですけど、とビーンズさんはボヤく。
「遺産自ら?」
ビーンズさんはさらに声を小さくさせて情報を教えてくれた。
「暗黒大陸より見つかったその遺産は、一つ一つ自我を持っているんですよ。今、十二支んの皆さんで対策と今後の話し合いをしていますが……なにせ会長がいらっしゃらないと……」
「あー…それもそうね」
うーん、思わず頭を抱える。
「アルテミスさん、この事は他言無用ですよ?」
「分かってる。ビーンズさん頑張ってね」
超・他人事の私は小走りで遠ざかっていくビーンズさんを見送った。
☆
「さて、私もボチボチ行きますか」
目の前にドーンとそびえ立つ高層ビル。
ここの最上階には、期間限定でプリンセス・ロゼッタの鏡が特別に展示されている。
まずは現物を見ないとね!
入場料無料の展示会へと、足を踏み入れた。
エレベーターで最上階へとたどり着く。
扉が開いて室内を見回し、ギョッとした。
見渡す限りの人、人、人。
予想はしていたが、ものすごい数の入場者で溢れている。
(でも、人混みに紛れて調べるには最適かも……)
エレベーターの位置や非常口の場所など、逃走経路の確認もそこそこに、鏡を見に行く。
広々としたスペースの中央に──その鏡はあった。
上半身が丸々映る程の大きな鏡。
鏡の縁は宝石がいたるところに散りばめられていて、一層輝きを演出している。
「……キレイ」
なるほど、これは確かに200億ぐらい価値がありそうだ。
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