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一切を無視して、メモに視線を落とした歩は
予想外の名に驚いて、一瞬眉を潜めた。
そんな歩の様子を探るように
木村は植野と会話しながら、こちらを観察する。
その興味本位な視線に気付き、
歩は瞬時に表情を消した。
エレベーターホールまで来ると
はぁーーーー、と歩は深い溜息を吐き出す。
由美子がいなくなって、本当にやりにくくなった。
中立地帯がなくなっただけではなく
あからさまなまでの、木村の女アピールに
男達が図に乗り、手に負えない。
その上、木村にとっての一番は
仕事をどう効率的にこなすかではなく
自分がどうすれば一番可愛く見えるかである。
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