雪割草~きみには内緒~

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赤いプラスチックのバケツに砂をたくさん詰め、ひっくり返されてできた大きな砂のプリン。 視線のさきで繰り広げられる光景は、僕も昔に経験したはずなんだ。 いまとなっては幻想にも思える、戻ることのない時間がそこにあった。 愛情は無くなるものなんだ――。 ニャン。 弱々しい猫の声が近くで聞こえ、僕はそっちに目をやった。 二匹の猫を抱えた女の子がすぐ近くまで来ていて、そのまま僕の横にすとんと座った。 深く椅子に座った女の子の足は地面に届いていない。 公園で遊ぶには少し不釣り合いに見えるピンクのワンピースと赤いカーディガン、白い靴下に黒いお出かけ靴。 それでも、どこかへ出かけた帰りに立ち寄ったんだろうと見当をつけ、なんとなく僕もこの子の親を待った。
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