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僕が小学生の頃、僕の学校では自殺者が絶えなかった。たくさんの同級生や歳の近い子たちが屋上から宙へと舞い、至る所で腕から紅い花を咲かせていた。このお話は僕とそんな時に出会った女の子との話。
彼女とはさほど深い面識は無かった。同じクラスというだけで、別に友達というわけでもない。ただ、顔を知っている程度の関係だった。僕は特に彼女に興味があるわけでもなく、かわらない毎日を過ごしているだけだった。彼女の印象はとても暗く、今にも消えてしまいそうというのが第一印象だった。よくいるいじめられっこ。そんな彼女をその時までは助けようとも思わなかった事は言うまでもない。
その日は突然訪れた。ある寒い冬の日。何気なく昼休みに散歩がてら歩き回っていた。何気なく来た人気の無い旧校舎。ここでここで首を吊ったり、手首を切り天に昇る生徒も少なくもない。そこで僕は彼女が旧校舎に入って行く姿を見た。いつもなら見なかった事にするだろう。だけど、その時僕はその場を離れる事が出来なかった。彼女を追いかけてある教室の一室に入る。予想通り、彼女は首に縄をかけようとしていた。
「うわぁぁぁぁ!」
奇声を上げながら僕は彼女にタックルした。
「止めないでよ!」
彼女は倒れた体を起こしながら言った。確かに止める義理は無い。だけど、何故か僕は無償に止めたかった。
「わかった……」
そう言って僕は彼女の手を握って新校舎の方に走った。彼女は突然の事で、驚いたのか黙ってついてきた。僕が向かったのは養護教育教室。彼女を椅子に座らせて、僕は黒髭危機一髪を取り出して彼女の前に置いた。彼女は僕の行動に目を丸くされた。
「もし、これで僕が負けたら僕は黙ってる。だけど、もし君が負けたら死なないでほしい」
「……わかった」
一拍間を置いて彼女は返事をした。
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