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 だがイオリはそのような考えに手を叩いて賛同できるほど良い人間でもなかった。  そもそもイオリがガリオンと戦うのは誰かを守りたいわけでも、人類を救いたいわけでもない。  ――自分から大切なものを奪ったガリオンが憎い。殺したい。  このもっともシンプルで凶暴な復讐心のみだった。  建前を取っ払えば、イオリは自分が死んでも1匹でも多くのガリオンを倒すことができればそれでよかった。  多くを守り、ひとりでも犠牲者を出したくないマーガレットと自分が犠牲になったとしても敵をひとりでも多く倒したいイオリ。  この考えの違いを埋めるために言い争ってもそうそう終わりは見えないだろう。  それを日々感じていたイオリは、自分の考えを一旦隅に置き、敬礼をしていった。 「善処します」  マーガレットが不満げな眼差しでイオリを見つめる。 「はいはい、痴話喧嘩はそこまでだよ」  パンパン、と手を叩いてミリアがふたりの間に割って入ってきた。  イオリとマーガレットは揃ってミリアを見る。両者の目からミリアの物言いに不満があるのが見て取れた。  だがミリアは、そんなことなど気にもせずに言葉を続ける。 「次はあたしの番だろ? 早くやってもらいたいんだけどねぇ」 「……すいませんでした。いますぐに準備します」  マーガレットは何か言い足りないようだったが、仕事中なのを思い出して別室へと引き返して行った。  その様子を見て小さなため息をつくイオリの肩にミリアが手を置いた。 「死にたがるのはあんたの勝手だけどさ、あたしを巻きこまないでおくれよ?」  そしてミリアはウィンクをする。  イオリはあまり表情を変えずに言い返した。 「善処する」 「また善処かい? あんたそればっかりだねぇ」  ミリアは苦笑いを浮かべるとイオリの肩から手を離し、シュミレーターへと乗り込んで行く。  その様子を見届けたイオリは踵を返した。
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